父親は「自分が死んだら3000万円の保険金が出る」と言っていたが、実際に亡くなり、支払われたのは150万円。父親が加入していたのは「定期付終身保険」。契約時の保険金の総額は3000万円でしたが、65歳で期間を終えた定期の特約が大部分を占め、受け取ったのは主契約の終身保険だけ。葬儀代にも足りなかった。
こんな目にあわない為にも、手持ちの保険を洗い出し、不具合があれば見直す「棚卸し」が重要です。
まずは死亡保障から確認です。子が独立したら大きな保障はいりません。60~70代では「定期付終身保険」に加入しているケースが多く、死亡特約には「定期保険」や「災害割増」「傷害」もあります。主契約の終身保険や特約の保険金や期間、保険料を確認し、不要であれば減額や解約が選択肢になります。保険料の払い込みが終わっていればそのままにします。
保険金が少なければ、死亡時の葬儀代(200~300万円)などを賄う目的で、別途、死亡保険に入るのも一つです。預貯金を充てる事もできますが、引き出しに時間がかかることがあります。保険金は一般に支払いが早く、「葬儀代の支払いに役立った」とのお声はよく聞きます。
医療保障は古くなっていれば見直しも一案です。「入院5日目から給付金」「20日以上入院すれば1日目から給付金」といった保険は、入院の短期化で条件に合わないことも珍しくありません。60代など若いシニアだと比較的少ない保険料で加入できることもあります。
名義の確認も重要です。保険には契約者(保険料負担者)、被保険者、保険金の受取人の3つがあります。若い頃に契約した死亡保険では、受取人が死亡していたり、離婚した配偶者のままであることもあります。死亡している場合は、保険金は相続人である子らが受け取りますが、手続きに手間がかかります。
認知症の対策も見逃せません。医療保険は通常、被保険者である本人が受取人になり、治療後に自分で給付金を請求します。何の備えもせずに本人が認知症になると、たとえ家族でも契約の内容を知ることはできないし、給付金の請求もできません。必要なら成年後見人制度を活用、後見人に請求してもらうしかありません。保険金の受け取りを契機に成年後見人の申し立てを裁判所に行う件数は年々増加しています。
対策として有効なのは「指定代理請求制度」の活用です。あらかじめ代理人を登録しておけば、病気やけがで判断能力がなくなったときに、本人に代わり給付金を請求できます。契約内容の照会や請求に加え、解約も可能な「保険契約者代理制度」を導入する会社もあります。代理人制度は原則無料なので、早めに登録しておきましょう。